うつ病を治す脳の騙し方|まずは運動から入るべき5つの理由

海沿いの女性ランナー

当記事は、「#4矛盾とは脳を騙すこと|うつ病克服にお勧めな運動と脳を騙すテクニック」の改訂版です。

最近、ネット上に『脳を騙す』という言葉が、かなり頻繁に登場します。

分野も、勉強法・ダイエット・自己啓発と多岐に渡っており、既にご存知の方も多い事でしょう。

読んでいるうちに、「うつ病を治す事って、脳を騙す事なのだな」と思うに至りました。

今回は『運動』に焦点を当てて、解説したいと思います。

うつ病は昔の名残が引き起こしている

まだ太古の昔、人類にとってのストレスとは、猛獣など天敵に遭うといった、生死に関わる事態でした。このとき、生き残るために機能していたのが、『海馬』と『扁桃体』です。

  • 『海馬』は「記憶」を司り、「生命の危機的状況」に遭遇したとき、過去の失敗の記憶を瞬時に引き出し、回避行動を促します。
  • 『扁桃体』は「感情」を司り、恐怖や不安を感じると、ストレスホルモンを分泌させます。それが血糖値を上昇させ、血圧が高くなり、筋肉のパフォーマンスを上げます
  • 『海馬』と『扁桃体』は強く繋がっており、双方の「記憶」と「感情」に干渉します。

こうして太古の人類は、厳しい大自然の中を生き抜いてきました。

その機能が、現代になってもなお、残っている状態です。

脳の構造

うつ病の人は、すでに脳が騙されている

現代におけるストレスの多くは、生死に関わりません。しかし昔の名残で、ストレス=生命の危機だと勘違いしているようです。

さらに、太古の昔は「逃げるか、闘って勝つか」をすればストレスが去るのに対し、現代のストレスは慢性的に続きます。

この、「いつまでも去らないストレス」に慣れていない『扁桃体』が過剰反応をし、暴走します。

その反応は、ストレスホルモン『コルチゾール』を大量に分泌させ、『海馬』の神経細胞を破壊してしまいます。

本来、脳の中で最も進化レベルの高い、脳の司令塔である『前頭前野』が、扁桃体の暴走を止める役割を担っています。しかし「慢性化したストレス」は、『前頭前野』の機能さえ奪います。

この状態がうつ病です(簡略化していますが)。

「ならば、運動によって再び騙し、新しい情報を上書きしよう」というのが、当記事の趣旨です。

詳しいうつ病のメカニズムは、下記の記事をご覧ください。

うつ病の原因|ストレスによる『扁桃体(感情)の暴走』が招く脳の機能不全
うつ病は、心の病気ではなく脳の病気です。そして治せます。脳内で何が起きているのか?うつ病の原因を理解すると何が有効な対策なのかが解るようになります。なるべく簡単に解りやすく説明しているので、うつ病の克服に役立ててください。

騙すターゲットはどの部位か?

うつ病の克服を目的とし、かつ運動によって騙すのなら、ターゲットは『海馬』と『扁桃体』でしょう。

理由は、以下のとおりです。

  • 双方とも『古い脳』なので、「運動」の影響を受けやすい
  • 『海馬』が辛い記憶を思い出すとき、『扁桃体』が関与する
  • 双方とも、『前頭前野』と太い繋がりを持つ

『海馬』は、情報を記憶させるだけではなく、記憶を思い出すことにも関係しています。このとき、『前頭前野』綿密な連携を取ります。

しかし『扁桃体』が暴走状態にあるとき、その「負の感情」の影響を受け、辛い記憶を引き出しては、それを追体験します。しなくて良いのに。

このことから、『海馬』と『扁桃体』を騙す必要があります。

まず行うべきは、『扁桃体』による不安感や恐怖心の支配と、「実際には悲観的ではない現実」とのギャップを埋めるために、『海馬』の認知機能を復活させることです。

どう騙すか?『海馬』は「繰り返し」に弱い

「そんなに簡単に、騙せるものか?」と思うかもしれません。

しかし私達は、日常生活の場面で、かなりそれを実行しています。

それは、勉強という行為です。

足し算や引き算程度はできた方が、日常生活も社会生活も円滑に過ごせるでしょう。

しかし、√2が1.41421356…だと知らなくても、一部の専門分野の方を除けば、まず困るシーンは無いと思います。まして、生死に関わるなんて考えられません。

記憶を司る『海馬』は、「生命の維持」に必要な情報を振り分けるので、√2などはまず却下されます。でも我々は、覚えるために繰り返し学習を行います。

『海馬』にしてみれば、却下したはずの情報が何度も何度も入ってくるので、「ん?必要なのかも?」と勘違いします。

そして長期記憶(ずっと忘れない記憶)として、側頭葉に格納します。

『扁桃体』も「繰り返し」に弱い

人前で話をするのが苦手な人、たくさんいますよね?

私もそうでした。緊張して「失敗したらどうしよう?」と不安になり、恐怖心すら抱いていました。たかだか教科書を朗読するだけで、膝がかくかく震えたものです。

でも社会に出てみたら、人前で話せないと仕事になりません。必要に駆られるとは不思議なもので、今ではギャラリーが多いほど快感になってしまいました。

『扁桃体』は、「快か、不快か」の判断をするのですが、以前は「不快」だったものが、繰り返すことで上手く話せるようになり、いつしか「快感」になったという訳です。

慣れることで、騙せたと言えます。

うつ病克服には運動が効果的

健康な状態であれば、「理性・論理的思考」を司る脳の司令塔、『前頭前野』の介入で『扁桃体』を説得できます。

しかし、『扁桃体』による「極端に悲観的な考え方」に脳が制圧されている状態では、上位脳にあたる『前頭前野』ですら、騙されてしまいます

よって、最初のうちは余計なことを考えずに済む、身体を動かすことの方が、ハードルが低くて取り組みやすいと思います。

そこで、私が最も効果を実感できた、『太陽光を浴びながら走る』ことをお勧めします。

走るのが苦手な方は、『早歩き』でもOKです。

危機的状況で走るという矛盾

もしも早朝の河川敷で、大量の汗をかきながら走っている人を見たら、「あの人、多分うつ病だね」と思う人はいないでしょう。

そうです、走っていること自体が、うつ病の人らしからぬ、『矛盾した行為』になってしまいます。もう既に、脳を騙し始めているということです。

 

『運動』によって「認知」を変える

『海馬』と『前頭前野』は、「記憶」とともに「認知(考え方)」も司ります。

「終わらないストレス」により『扁桃体』が暴走した影響で、「認知」もネガティブな状態に陥っています。

それは我々に、「外に行くと危険が待っている」と思わせます。怠く、身体が重い状態にし、引き籠らせていると考えられます。

また、飢餓を回避するために、むしろ太らせて脂肪を蓄える方向に作用します。

そこで大量の汗をかきながら脂肪燃焼に努めれば、脳は「あれ?」と思うでしょう。

「せっかく危険から遠ざけたのに、なぜ真逆の行動をとるのだ?」と疑念が生じます。

更にそれを繰り返し、繰り返し続ければ、「もしかして、もう安全なのかも?」と騙され、警戒態勢を解いてくれるわけです。

警戒態勢が解かれると『コルチゾール』が正常値に戻り、安心感を与える『セロトニン』が分泌されます。

何も考えずに運動しただけで脳を騙し、「認知」を変えることが出来るのです。

運動がもともと持つ二つの効果

1.生理学的な効果

運動をすると、『BDNF(脳由来神経栄養因子)』というタンパク質が盛んに分泌されます。

脳由来神経栄養因子…、なんだか如何にも良さそうな名前ですよね。これは「脳の栄養」で、以下の作用があります。

  • 脳の神経細胞(ニューロン)の新生を促す
  • 脳に栄養を運ぶための、血管形成を促す

「ニューロンは加齢とともに減っていき、新生することはない」と習ってきましたが、その説はもう古い!今では「後天的に増える」ことが科学的な常識になっています。

ニューロンの新生と血流量の増加で、委縮した『海馬』が真っ先に大きくなり始めます。

さらに血流量の増加は、『前頭前野』の機能を正常に戻し、『扁桃体』の興奮を鎮めます。本来の「脳の司令塔」の座に返り咲くのです。

そして、ニューロンが鍛えられると、ストレス耐性の向上が期待できると、最近の研究で分かってきています。つまり、再発の予防にも非常に有効なのです。

また運動は、うつ病の人に不足している、『セロトニン』『ノルアドレナリン』の分泌を促す効果もあります。薬に頼ることなく、本来あるべき方法で、です。

2.心理学的な効果

まず、運動後の爽快感を味わって欲しいです。

私は瞬発力系の運動は好きなのですが、持久力系の運動は苦手です。それでも走るのは、走った直後の快感を味わいたいからです。

うつ病の人にとって、長らく忘れていた感覚でしょう。病気により「不快」に支配された脳が、運動により「快」を取り戻すのですから。

また、体力に自信があると、様々な面で前向きになれます。

有酸素運動を続ければ、確実に痩せます。贅肉が落ちていく様子を見て、嬉しくないなんて人はいませんよね。

自分で決めたメニューを熟した達成感もありますが、うつ病にかかる人は真面目で自分に厳しい傾向があるので、そこは柔軟に行ってください。

他にも挙げたらキリがありません。人によって、心理学的な効果も様々です。

運動がもともと我々に与える恩恵、それに脳を騙すことによる相乗効果で、BDNF(脳由来神経栄養因子)やセロトニンを増やし、「認知」を良い方向に変えていきましょう。

 

運動の方法

一般的に、ウォーキングやジョギングといった、有酸素運動が良いとされています。

しかし、頑張ってはいけません。心拍数が1分間120を超えると、逆効果になってしまいます。「会話はできるけど、ちょっと息苦しい」程度が目安です。これを週3回以上、10分~30分行えば効果が得られます。もちろん、毎日でも構いません。

筋トレに関してですが、一般的には推奨されていません。BDNF(脳由来神経栄養因子)が増える一方で、ストレスホルモン『コルチゾール』も分泌されるからです。

しかし私は、確実に効果を実感できました。贅肉が取れていき、どんどん筋肉質の身体になっていく。単純に嬉しいですよね。心理学的な効果は、確実にありました。これは、「好き嫌い」だと思います。『扁桃体』が「快・不快」どちらの判断をするかです。

例えば、カラオケで歌うことが快感の人もいれば、この上なく不快な方もいます。好みは人それぞれなので、無理に型にはまる必要はないでしょう。

私は筋肉痛を心地よく感じますが、不快に感じる人は止めるべきです。

また、運動後にアミノ酸スコア100のプロテインを飲むことを勧めます。なぜなら、セロトニンやノルアドレナリンの原料となる必須アミノ酸を、効率よく摂取できるからです。

『ガムを噛む』や『ヨガ』も効果的

効果的な運動は、ウォーキングやジョギングに限る、という訳ではありません。「同時に太陽光を浴びることが出来るから」という理由でお勧めということです。

一定のリズムで行う運動を『リズム運動』と言いますが、「ガムを噛む」ことでも効果が得られ、セロトニンが分泌されます。ヨガ、ダンス、太極拳でもOKです。ただ、『日光浴』も忘れないようにしましょう。

まとめ

最後に、うつ病の克服の為に、まずは運動をお勧めする5つの理由をまとめます

  1. 何も考えずにできるので、比較的ハードルが低い
  2. 何も考えずに運動するだけで、脳を騙すことになる
  3. 生理学的な効果:脳内ホルモンバランスを整える
  4. 心理学的な効果:快感を味わえ、自信を持てるようになる
  5. ストレス耐性が強くなる