私たちにストレスが蓄積されると、心身に様々な変調をきたします。
精神疾患をはじめ、胃や腸といった消化器系、心臓など循環器系、皮膚科領域、偏頭痛など脳に関わる病気と非常に多岐に渡り、時には命の危険にもつながる場合もあります。
それを防ぐには、ストレス耐性を上げることと、できるだけストレスを減らす必要があります。
ストレスの元を挙げたらキリがありませんが、単純化すれば2種類に集約できます。
闘っても良いストレスと、逃げるべきストレスです。
何を基準に見分けるのか?闘うとしたら、何をすればよいのか?を解説していきます。
Contents
まずは運動してストレス耐性を強くする
「また運動か…」と思われるでしょうが、ストレスやうつ病に対処するためには、馬鹿の一つ覚えだと言われても運動は外せません。
ストレスの影響を小さくするには、まずストレス耐性を強くする必要があります。
うつ病の人は、患っている期間が長いほど『海馬』と『前頭前野』の委縮が進みます。
それぞれ、以下の役割を担っています。
- 海馬は、ストレスホルモンの過剰分泌を抑える
- 前頭前野は、論理的思考で『扁桃体の興奮』を鎮める
これらが機能しなくなると、ストレスに対処できないどころか、うつ病を発症しかねません。それは避けたいところです。
運動が脳の委縮を防ぐ
運動をすると、脳内でセロトニンやノルアドレナリンとともに、『BDNF(脳由来神経栄養因子)』の分泌が活発になります。『BDNF』には、次の作用があります。
- 脳の神経細胞の新生を促す
- 既存の神経細胞を強化する
- 神経細胞のネットワークを強化する
海馬と前頭前野の委縮を防ぎ、太く、強く保つ効果がよく解ると思います。
これが、運動によりストレス耐性を向上させる仕組みです。
小さなストレスに捕われなくなれば、対処すべきストレスに関わる時間を多くとれます。
実際に、ストレスへの対処法を考えるために使うのは、「脳の最高中枢」と呼ばれる『前頭前野』です。『扁桃体の興奮』を抑えることが出来るのは、最も新しく進化した脳でなければ無理です。情報処理能力がまるで違います。
常にその機能を落とさないように、定期的な運動を心掛けましょう。
運動の方法については、こちらをご覧ください。

短期的なストレスと長期的なストレス
ストレスは、その影響が及ぶ長さによって、大きく二つに分類できます。
短期的なストレスとは
- 今日は苦手な数学の授業がある
- 就職活動で面接を受ける
- 取引先と大切な商談がある
といった、一時的なストレスを指します。
ストレスを受けた時に分泌されるのは、主に『アドレナリン』『ノルアドレナリン』です。一時的に、「体が動く・やる気が出る」ように作用します。
長期的なストレスとは
- 嫌いな上司の下で働く
- 長時間労働が続いている
- 近所付き合いが上手くいかない
- 学校でいじめに遭っている
といった長い期間に及び継続するストレスで、人間関係がその代表となります。
その多くが、「我慢を強いられる」という特徴を持っています。
この場合、主に分泌されるのは『コルチゾール』で、うつ病につながる危険性があります。
短期的なストレスへの対処
私たちのストレス反応は、いまだに原始時代の名残をとどめている状態です。
猛獣などの天敵に遭遇した時、「闘うか、逃げるか」の行動に素早く移行する為のものです。それは「勝つか、逃げ切るか」すれば終わる、短期的なストレスでした。
それを踏まえれば、いま目の前にあるストレスと、「闘うか、逃げるか」を判断するのが、『扁桃体』には解りやすいでしょう。主に、苦手の克服が当てはまります。
基本的には、「短期的なストレス」とは闘って問題ないと考えます。闘うと言っても、喧嘩をする訳ではありません。
いっそのこと、ストレスに慣れてしまう
これは、ストレスを受ける状況に、積極的に身を投じる方法です。
一見乱暴のようですが、場数を踏むことにより、『扁桃体』の過敏な反応を鈍くすることが目的です。「これは、命にかかわる事態ではないよ」と、繰り返し教えてあげるのです。
この過程は、おそらく何らかの形で、皆さんが経験していると思います。
代表的な例は、部活です。初めての試合に出場したとき、かなり緊張したはずです。ところが2試合、3試合と経験するうちに、その緊張の度合いは減っていきませんでしたか?
慣れることにより試合度胸がついて、『扁桃体』が鈍感になった瞬間です。
頑張ろうと決めた時、『アドレナリン』『ノルアドレナリン』が分泌されます。血圧と心拍数を上昇させ、脳を覚醒させます。アドレナリンが各臓器に働くのに対し、ノルアドレナリンは脳で作用し、我々に「やる気」を与えてくれます。
この二つの物質は、一過性という特徴を持っているため、長期戦には向きません。
長期的なストレスへの対処
問題は、「慢性化したストレス」にどう対処するかです。
ストレスが長期化・慢性化すると、『コルチゾール』が優勢になってきます。コルチゾールは、ストレスから身を守るために必要不可欠な物質ですが、『扁桃体』の興奮によって過剰分泌になると、『海馬』を破壊するなど悪影響が出てきます。
まずは第一の選択肢として、そのストレスから逃げることが挙げられます。「慢性化したストレス」を我慢し続けると、うつ病発症のリスクが高くなるからです。
しかし様々な事情から、そう簡単に転校や転職、引っ越しが出来るものではないでしょう。
時には、闘うことも必要となるかもしれません。
そこで、長期的なストレスを分割し、いくつかの短期戦に持ち込む方法があります。
- 理不尽な上司に直々に抗議してみる
- 課長が理不尽すぎるなら部長に相談してみる
- 悔しいから仕事で大きな成果を上げて見せる
といった感じです。
ひとつひとつに取り組むのは短期的ですが、目的は上司に態度を改めてもらう事に一本化されています。上司も人間です。今まで頭を下げるだけだった部下が、いきなり強い態度に出れば、多少なりとも動揺して当たり前です。
我慢し続けて破滅的な思考に陥るよりは、『ノルアドレナリン』から「やる気」を貰えるだけ、精神衛生上は良いのではないかと思います。
ストレスと闘う上での注意点
必ず誰かに相談する
「長期的なストレス」と闘う場合、事前に誰かに相談することをお勧めします。
家族・友人・同僚など、第三者の意見を聞くことには、とても大きな意義があります。
「行列のできる法律相談所」でお馴染みの北村弁護士は、自分が紛争の当事者になったとしたら、別の弁護士に依頼をするそうです。自分でやれば費用も安く済むと思うのですが、当事者になってしまうと、どうしても感情的になり冷静さを失うからだそうです。
一人で悩んでいると視野も狭くなるので、自分にはない考え方に触れることが重要です。第三者の意見はいつも客観的で、冷静な判断によるアドバイスです。
思いもしなかった危険性や、もっと簡単な方法を教えて貰えるかもしれません。
また、人に話を聞いてもらう行為自体が、ストレスを軽減する効果があります。
十分な休息をとりながら行う
闘っている最中は疲れを忘れますが、後になってどっと疲労を感じるものです。
一時的であれ、普段とは違う緊張の中に飛び込むので無理はありません。
また、アドレナリン・ノルアドレナリンもコルチゾールも、『副腎』で作られます。ストレスと闘っているとき、または我慢をしているときに、平常時よりも多く分泌されます。
その状態が続くと、生産過多になり『副腎』が疲弊します。とりわけ、コルチゾールが副腎疲労に大きく関係していますが、アドレナリン・ノルアドレナリンも無関係ではないので、定期的に休息をとる必要があります。
まとめ
基本的に闘っても良いストレスは、『アドレナリン』と『ノルアドレナリン』を使って対処できるものです。「気合い」や「やる気」を感じるような時です。
一方、コルチゾール過剰を招くような、長期的なストレスからは、逃げたほうが無難でしょう。このストレスの特徴は、「耐える」「我慢する」ことを必要とします。
ただし、長期的なストレスを、いくつかの短期的なストレスに分割できるのなら、闘う余地は残されています。
そして、これらのチャレンジを支えるのが、運動によるストレス耐性の向上ということになります。