うつ病の最新治療法~診断の見える化~うつ病を克服する最新技術と日本の課題

パソコンと聴診器

できれば、この記事を読む前にこちらをご覧ください。理解しやすくなります

うつ病の原因|ストレスによる『扁桃体(感情)の暴走』が招く脳の機能不全
うつ病は、心の病気ではなく脳の病気です。そして治せます。脳内で何が起きているのか?うつ病の原因を理解すると何が有効な対策なのかが解るようになります。なるべく簡単に解りやすく説明しているので、うつ病の克服に役立ててください。

脳科学の進歩により、これまでの薬物療法以外に、新しい治療方法が生み出されています。

これまでの薬物療法の他に、治療の選択肢が増えてきたことは嬉しい事です。

しかし、本編で述べますが、日本には大きな課題があります。この不条理に対し、私たちはもっと声を上げるべきでしょう。

診断においても、大きな変化が見られます。これまで問診のみだった診断に、客観的なデータを得られる検査が導入され始めたのです。今のところ不完全ではあるけれど、うつ病の状態を示すデータを得られるかもしれません。また、誤診の防止にも役立ちます。

参考:NHKスペシャル ここまで来た! うつ病治療

最新のうつ病治療

なんとなく、日本人は「繊細で慎重」、アメリカ人は「楽天的でチャレンジ精神旺盛」というイメージを持つ方は多いのではないだろうか?

しかしアメリカは、「うつ病大国」と呼ばれ、生涯でうつ病にかかる人の割合は、日本人の3倍にも昇るのだそうです。意外でしたが、それゆえに研究が盛んに行われています。

アメリカで行われている、うつ病の最新治療法をご紹介します。

 

用語の説明

扁桃体      感情を司る脳の部位です。ここが『暴走』すると、うつ病を発症します。

DLPFC     脳の前頭前野の一部で、意欲を司ります。『扁桃体の暴走』を止める役割があります。

脳のうつ病に関する部位

TMS経頭蓋磁気刺激

「うつ病大国」アメリカにおいて、500か所以上の医療機関で実施されている治療方法です。

コイルの入った装置を頭に当て、磁気を照射することにより、脳の機能を改善する方法です。

頭に当てる装置自体はそんなに大きくなく、アームで椅子につながっています。ちょうど歯医者さんのイメージで、口の中を照らす照明を、頭に当てる装置に付け替えたような感じです。分かり難いかもしれませんが、そんなサイズ感です。

磁気の照射により『DLPFC』を刺激すると血流量が増えるため、本来の機能が回復していきます。つまり、『扁桃体の暴走』にストップをかけ、意欲もよみがえってくるのです。

また、『25野』と呼ばれる、扁桃体の近くにある領域があり、扁桃体に強烈に作用することができます。更に『DLPFC』とも神経回路がつながっているため、二つの部位に同時に働きかけることができます。TMS治療は、『DLPFC』を通して、『25野』にも作用するそうです

さらに、磁気刺激によりドーパミンが増えることも確認されています。

ドーパミンとは、報酬や快楽、意欲に関係する神経伝達物資で、セロトニンとともに、うつ病の症状に大きく関係することで知られています。

TMSならではのメリット

薬による治療と比べ、副作用が殆どないというのが大きなメリットです。

治療中も会話を楽しむ余裕がり、苦痛や恐怖心がないというのは、気持ち的に楽でしょう。

また、症状が改善していくのを実感できるため、治療に前向きになれます。それが『運動』や『規則正しい生活』に取り組む意欲にもつながっていき、回復に向けた良い循環が生まれる訳です。

この治療により、約6割の方が回復しました。

デメリット

まだ日本では審査機関の認可が下りず、保険が適用されないことです。

そのため、高額な『自由診療』または『治験プログラム』に参加するしかありません。

日本でTMS治療を受けられる医療機関一覧

日本メンタルヘルス研究センターのページ『うつ予防ナビ』で、詳しい説明とともに、治療を受けられる病院が紹介されています。

うつ予防ナビ|日本メンタルヘルス研究センター

※保険適用外 治療費: 100万円~200万円

 

うつ予防ナビに掲載されていない病院

自由診療

東京都千代田区     TMS専門施設 お茶の水うつ病クリニック

東京都渋谷区        つのおクリニック

愛媛県今治市        心療内科 Dクリニック

広島県広島市        医療法人ハンス ハンス心療内科クリニック

佐賀県唐津市        医療法人唐虹会 虹と海のホスピタル

福岡県久留米市     齋藤醫院

治験プログラム

京都府宇治市       京都府立 洛南病院

福井県福井市      公益財団法人 松原病院

デバイス・ラグ

治療費を見て「高すぎる!」と、誰もが感じるでしょう。

この治療方法は、2008年にアメリカの審査機関(FDA)の認可を受けています。しかし、未だに、日本の審査機関である独立行政法人・医薬品医療機器総合機構(PMDA)の認可は得られていません。

実施機関はあまりに少ないし、保険も適用されない。これでは、一部の人しか恩恵に与れません。

何故なのか?

『デバイス・ラグ』というのが、日本の医療が抱える重大な問題となっています。『デバイス』とは医療機器のことを指し、『ラグ』は時間差です。つまり、海外では認可が下りて、普通に使われている最先端の医療機器が、日本で承認されるまで時間がかかり、遅れてしまうのです。

2008年から、「PMDA」は5か年計画で人員を増強し、『デバイス・ラグ』は改善傾向にあるものの、欧米との時間差を埋められていないのが現状です。

厚生労働省は『TMS機器』を早期導入品目(認可を優先的に進める)に選定しているとの話もありますが、期待して良いのかどうか…?

認知行動療法

先にご紹介した『TMS(経頭蓋磁気刺激)』が『DLPFC』に磁気を当てることによって治療したのに対し、認知行動療法によりそれと同じ作用を引き起こすものです。

感情のコントロールは、『DLPFC』からの指令で行われます。認知行動療法のトレーニングで『DLPFC』を鍛えれば、活性化して『扁桃体の暴走』にブレーキをかけ、うつ病の症状を抑え込むことができます。

脳のうつ病に関する部位

『認知』とは、「考え方」や「イメージ」を指します。

ある出来事に対して、瞬間的に浮かぶ「考え」や「イメージ」のことを『自動思考』と言います。これにより、人それぞれの『認知』の仕方や『行動』が生まれるのです。それ自体は個性であって、決して悪い事ではありません。

しかし、物事を悲観的に捉えすぎる『癖』のようなものがあると、ストレスを溜め込みやすく、うつ病に繋がる可能性があります。そういった癖を『認知の歪み』と言い、それを修正するトレーニングが『認知行動療法』です。

人の「考え方」が、そう簡単に変わるものか?と思われる方もいるかもしれません。私も、その一人です。そこで、あくまでも個人的な見解を述べたいと思います。

くれぐれも誤解の無いように言っておくと、認知行動療法はイギリスにおいて、その成果が数値として示されています。アメリカでは脳科学的に、認知行動療法による『扁桃体』と『DLPFC』の変化がデータ化されています。

しかし薬と同様、効果を得られない人がいるのも事実であり、「それは何故なのか?」がある程度分かれば、無益なガッカリをせずに済むのでは?と思った次第です。平たく言うと、私には効かなかったのです。

相性の問題と資質の問題

まず、カウンセラーとの『相性』の問題は、間違いなくあります。相性や話が合わない人と30分~60分間も話し合うのは、それなりにストレスではないでしょうか?

「考え方の修正」を提案されても従う気になれなければ、効果がないのも自明の理です。

次に『資質』の問題です。

人の「考え方」が変わる瞬間って、どんな時だろう?と考えると、それなりのインパクトが必要なのではないか?と思います。

番組中では、「仕事を完了できなかった」ことを気に病んでいる方に対し、臨床心理士さんがヒアリングを行います。すると任された仕事が約350件に対し、ミスを犯したのは3~4回だと判明する。電卓でその割合を計算すると、僅か1%であることを示し、

「もし1%の仕事が出来なかった部下がいたら、“お前は期待に応えていない!”って、怒りたくなりますか?」と指摘する。

すると患者は「ならないですね、そうですよね」と額に手を当てながら、“そうか!気づかなかった!”という表情を浮かべる。

この鋭さは、勉強や訓練で身に就くスキルなのだろうか?と思いました。

実際の相談内容は仕事に限らず、家庭、恋愛、人間関係、病気、果ては人生についてなど多岐にわたり、人生経験とともに『機転』や『着想』が必要で、いわゆる『才能』による部分も大きいのではないか?と考えてしまうのです。

つまり、インパクトを与えうる着眼点を持つ人ならば、特に資格を持たずとも、同じような効果をもたらすことが可能では?という『素人考え』が浮かんできます。

※決して、資格を有さない人の開業を促すものではありません。

うつ病のタイプの問題かも?

これは『素人の推論』ではなく、『科学者の仮説』です。

認知行動療法の効果を、脳科学者の立場から研究している、アメリカ・ピッツバーグ大学のグレッグ・シーグル准教授は、認知行動療法と薬物療法が、それぞれどんなタイプのうつ病に有効なのかを見極める研究をしているそうです。

これは凄いことです!

治療前に脳画像を調べることにより、早い段階で、有効な治療を受けられる可能性があるのです。

まだ対象者が少ないので仮説だと前置きしながらも、シーグル准教授は教えてくれた。

「我々の研究の結果、認知行動療法で最も高い効果が現れる患者は、感情を監視する脳領域の活性が低い人です。その脳領域とは、25野のことです。ですから反対に、25野の活性が高い人は、認知行動療法による回復が難しい傾向にあります。だから、治療の前に脳画像を撮って、もしここが活性していることが判れば、その患者には薬物療法を行います。」

感情を司るのは『扁桃体』です。『25野』については『TMS(経頭蓋磁気刺激)』に登場した、『扁桃体』と『DLPFC』両方に働きかける脳領域です。その活性により適正治療を判断できるのなら、診断において、これまでにない説得力を持つことになります。

シーグル准教授は、こうも語っています。

「患者によって、治療法の選択ができるようになるのは時間の問題だと思います。この10年以内に、内科などの様々な医療分野と同じように、患者の検査をして適切な治療法を選択できるようになることを目指しています。」

こうした最新技術の恩恵を、『デバイス・ラグ』なしに与りたいものです。

認知行動療法を受ける場所

まずは、お住まいの地域の精神保健福祉センターに問い合わせてみるのが良いでしょう。

インターネット検索でかなりヒットしますが、施設のホームページでは分からない情報があるかもしれません。

2010年4月から保険適用になったのですが、それは医師が行う場合です。しかし医師は非常に多くの患者を抱えており、診療報酬の基準にも問題があるため、なかなか30分以上という時間は取れないのが現状です。

医師による認知行動療法を希望される場合、大学病院のように大きな病院なら、『医療技術の研究と向上』を目的とし、採算度外視で保険適用にしている場合があります。

うつ病の診断における最新技術

これまでずっと、精神科では『問診』でのみ、診断が行われてきました。

医師の経験や技量が大きく関わり、正しい診断が得られないことも、しばしばあるようです。

そんな中、新たな検査方法が注目されています。

精神科の領域に、ようやく『客観的なデータによる検査』が導入され始めたのです。いわゆる、「診断の見える化」です。もちろん、精神疾患の診断はそんなに単純ではなく、今のところは『診断の補助』的な役割です。

しかし、研究が進歩していけば、客観的データに基づいたより精度の高い診断と、的確な治療を受けられるようになる筈です。大いに期待したいところです。

光トポグラフィー検査

頭にヘッドギアのような装置を取り付け、近赤外線を当てることにより、脳内の血流量を画像で見ることができます。近赤外線は人体に無害なので、ご安心ください。

検査中、被験者は「あ、い、う、え、お」と言ったり、簡単な質問に答えたりします。たとえば、「た、で始まる言葉は?」といった具合です。これは言葉を考えているときの血流量を見るためで、答えられなくても落ち込むことはありません。

人間が言葉を考えているとき、前頭葉が活発に働きます。活発になると酸素を消費するので、血液量を増やして酸素を補給します。

ところが、うつ病の人は脳の活動が鈍くなっているので、血流量がほとんど増えないのです。

あの、頭に霧が掛かったように「ボー」とした状態が、まさか画像として見られるとは思いもしませんでした。

血流量の変化にはパターンがあり、上記は『うつ病のパターン』です。

他にも『双極性障害のパターン』と『統合失調症のパターン』、そして『健常者のパターン』があり、現在のうつ症状が、どの病気に由来しているのか?を診断するうえで『参考となるデータ』を得ることができます。

光トポグラフィー検査は『診断』ではない

ここで注意すべきは、光トポグラフィー検査は診断を行わないことです。

診断はあくまで医師が行い、そのうえで『参考となるデータ』を提供するために検査が行われます。

『病気の程度』や『有効な薬』が判る訳ではありません。

精度は約60%~80%と言われています。

ガッカリされた方もいるかもしれません。しかし、科学的な検査による『客観的なデータ』を得られることは、とても画期的なことだと思います。

これまで精神科領域においては、診断は『問診』のみで行われ、医師によって診断がばらついたり、時には『誤診』を招いたりもしました。

『数値化されたデータ』を、患者も見ることができることは、ある程度の安心材料になるのではないでしょうか?

もしも「どうも薬が効かない」「治療が長引いている」という場合、検査してみるのも良いでしょう。

こちらも、日本メンタルヘルス研究センターのページ『うつ予防ナビ』で、詳しい説明とともに、検査を受けられる病院が紹介されています。

うつ予防ナビ|日本メンタルヘルス研究センター

※1 2014年3月時点の情報です。『お住まいの地域 光トポグラフィー検査』で検索すれば、ほかにも見つかると思われます。

※2 2014年4月から保険適用となりましたが、病院により異なる場合があります。事前にお問い合わせください。

血液検査による診断(『PEA』の測定)

少し難しい名前が出てくるので、同じ名前を意図的に多用します。

うつ病患者は、『PEA(リン酸エタノールアミン)』の血中濃度が低下しています。

脳内には多く『リン酸アナンダミド』が存在します。それ自体は活性を持たない物質ですが、『アナンダミド』と『PEA(リン酸エタノールアミン)』に分解されます。

『アナンダミド』は「脳内麻薬」とも呼ばれ、「快感」や「喜び」という感情に作用し、『PEA』は血液を通じて身体へと流れていきます。

『アナンダミド』と『PEA』は同時に生成されるので、『PEA』が減少しているということは、「快感」や「喜び」に影響する『アナンダミド』も低下していることになります。

つまり、血液検査で『PEA』の濃度が一定数値以下であれば、「うつ病の状態であること」が判るのです。

さらに、光トポグラフィー検査では不可能だった『病気の程度』や『有効な薬』の判別が、ある程度できる可能性もあるようです。

精度も約90%と、かなり高い数値を表しています。

この「うつ病の状態であること」を、客観的な数値として得られ、且つ約90%という高い精度を持つことには、大きな意味があります。

うつ病患者が必要としていること

私たちが回復する上で、最大の障壁となるのは『病気への無理解』と、そこからくる『偏見』でしょう。

私自身、「自分がうつ病になる訳がない」と極限まで認めなかったために、すっかり重症化してしまいました。私にも『偏見』があった、何よりの証拠です。

自分がうつ病を経験しなかったら、ほかの人たちと同じように「そんな小さい事にこだわるな!元気出せ!」くらいは言うでしょうね。恥ずかしながら。

それだけに、「これは、気持ちの問題ではなく、脳の病気なのだ!」と示せる、『証拠』となるものが欲しいと、ずっと思っていました。

『PEA検査』の約90%という高い精度を見ると、「うつ病であることを、ある程度立証できるのではないか?」と、ついつい期待してしまいます。

「90%の確率でうつ病」という検査結果なら、かなり説得力を持つと思いませんか?

ただし、100%ではない事を考慮する必要があります。

10%の人には、うつ病なのに「うつ病の状態ではない」とのデータが出てしまう訳です。

光トポグラフィーと同じように、『診断の補助』だと理解しておけば、相当有用なツールであると分かると思います。

参考:せせらぎメンタルクリニック|精神科・心療内科

現在実施している病院は少ないですが、今後全国的に使用が広がっていく予定だそうです。以下、実施している医療機関です。(私が調べた範囲なので、まだあるかもしれません。)※保険適用外

東京都港区       医療法人社団行基会 川村総合診療院

費用:無料

東京都新宿区      新宿ストレスクリニック

費用:15000円(税別)

神奈川県川崎市   一般財団法人聖マリアンナ会 東横惠愛病院

費用:初回15000円(税別)2回目以降12500円(税別)

最後に

医学の進歩とともに、治療の選択肢が増えてきたことは確かです。

しかし、『デバイス・ラグ』が存在する限り、私たちは最新の医療をタイムリーに受けることができません。さらに『デバイス・ギャップ』という問題も抱えています。これは遅れるどころではなく、海外で標準的に使われている医療機器の半分しか、日本に導入されていない実態があるのです。

また、欧米で認可され、一般的に使われている『新薬』が、日本では承認が遅れてしまう『ドラック・ラグ』も、社会問題として広く知られるところです。

最新の治療を受けたければ、中国や韓国に行かねばならない、という事態にならないことを祈ります。