うつ病克服法|誰でもできる行動活性化療法/行動を起こして脳を騙す

脳の構造

38億年に生命が誕生してから、『脳』という器官ができたのは約5億年前です。38億年=38歳で換算すると、『脳』はまだ5歳児です。

さらに人類が誕生したのは約400万年前。『人類としての脳』を獲得したのは、わずか15日前ということになります。

東京大学・大学院薬学系研究科・池谷裕二教授はこう言っています。

身体は脳の支配下にあると思われがちですが、本当は逆で、カラダが主導権を握っています。脳は進化の歴史では新参者なのです。

「楽しいから笑う」のではなく「笑うから楽しい」、「やる気が出たからやる」のではなく「やるからやる気が出る」のです。

池谷裕二が指南!やる気が出る「脳」のだまし方 | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online  

『行動』が脳を騙す

『身体』が主導権を握っているのなら、脳を『行動』によって騙すことも可能ということになります。『行動』で、脳の『認知(考え方)』を変えるわけです。

お気づきかと思いますが、これは認知行動療法です。その技法として、大きく分けて2種類あります。『認知』の修正が先か、『行動』から入るかです(後述)。

成果が数値化され、「副作用がない」「再発率が低い」ことで注目されている治療法ですが、効かない人が居るのも確かです。寛解(全治ではないが安定した状態)に至る人は、約60%と言われています。

ある場面で瞬間的に浮かぶ「考え方」を、『自動思考』と言います。これが「悲観的で非現実的」なものなら、うつ病になり易いかもしれません。

そこで、カウンセラーさんと共に「より現実的な考え方」を見つけ、その考えに則した『行動』をして確認する。そして効果がなければ、修正していく。

いわば、仮説と検証を繰り返すようなものです。この辺は、科学的で良いですね。

効かない人がいるのは何故か

認知行動療法を調べてみると、『認知(考え方)』に重きを置いているようです。

しかし私には、「そんなに簡単に人の考え方が変わるだろうか?」と思えてなりません。それは長年に渡って習慣になっている、「自動的に浮かぶ考え」なのですから。

それを変えるとなると、当然、それ相応の時間がかかります。一般的に、効果が出るまで早くて3か月と言われています。

効かない人は、『認知』を変える作業で躓くのではないでしょうか?

認知行動療法のメカニズム

脳の構造

慢性的なストレスにより、感情を司る『扁桃体』が暴走することに端を発し、うつ病が発症します。『扁桃体』がもたらす負の感情は、たちまち脳を支配してしまいます。

それは本来、扁桃体の暴走を監視する役目を持つ、『前頭前野』の機能をも奪ってしまいます。

このことから、脳が『扁桃体』の「負の感情による制圧」の状態にある場合、先に『認知』を修正する技法は難しいと言えます。『前頭前野』の活性が低いためです。効力を発揮するには、薬物療法や運動などで「軽度」まで回復する必要があります。

『前頭前野』に『DLPFC(背外側前頭前野)』という、認知や判断、意欲に関係する領域があります。この領域が、『扁桃体』の暴走にブレーキをかける役割を担っているのです。

『DLPFC』は「論理的な思考」も司っているため、『認知の歪み』を矯正することにより、扁桃体(感情)をコントロールすることが可能になります。

これが、認知行動療法が脳に作用するメカニズムです。

『自動思考』はどこから来るのか?

単純に考えれば、ネガティブな感情を伴うのだから、『扁桃体』が思い浮かびます。しかし古い脳なので、複雑な情報処理はできません。言葉にならないような漠然とした、恐怖や不安といった程度の情報です。

ここで、最も新しい脳である『前頭前野』の出番です。『扁桃体』による意味不明な情報を、言葉に変換する機能を持っています。

つまり『自動思考』は、扁桃体と前頭前野が連動して生み出されると考えられます。

そこで『前頭前野』の機能を使って、曖昧な感情を言葉に変換し、「論理的思考」を使って『扁桃体』の間違いを正すのです。

あたかも「この世の終わり」のように大騒ぎしている『扁桃体』に、「いやいや、全く生命の危機ではないし、冷静に考えれば解決策があるから。」と説得します。

今日、この時だけ『行動』する

私がうつ病克服のために行った事を振り返ると、あまり深く考えずに、ひたすら『行動』していました。

「うつ病の人は、過去と未来を生きている」という言葉を聞いた事があるのですが、正にそうです。過去を後悔し、未来に絶望し続けていました。

だから、今日この時だけを考えて、集中するしかありませんでした。

最近になって、「ああ、あれは認知行動療法だったのだな」と気付いた感じです。

しかも、カウンセラー要らず、自分で出来る方法です。

因みに、当サイトで幾度も推奨している『運動』も、それがどう作用するのか理解(認知)した上で行えば、認知行動療法になります。

『行動』から入る認知行動療法

認知行動療法の技法のひとつに『行動活性化療法』があります。

この方法がまさしく、冒頭で引用した、池谷祐二教授の言葉を体現しています。重要なので、再度引用します。

身体は脳の支配下にあると思われがちですが、本当は逆で、カラダが主導権を握っています。脳は進化の歴史では新参者なのです。

「楽しいから笑う」のではなく「笑うから楽しい」、「やる気が出たからやる」のではなく「やるからやる気が出る」のです。

脳の性質を考えると、『扁桃体』が「感性的」なのに対し、『前頭前野』は「論理的」と言えます。

「感性」で生きている人は、思い立ったら即『行動』です。そして、「考える」よりもまず『行動』というのは、より「本能的」です。

つまり、古い脳である『扁桃体』に作用しやすく、騙しやすいと考えられます。

※実際の『行動活性化療法』は、活動記録表に記録して、定期的に「振り返り」を行い見直していくのが正式な方法です。一人で行う手順が、以下のサイトで分かりやすく説明されています。

行動活性化療法とそのやり方~認知行動療法の1つ!「行動」を変えてうつ病を治す~

うつ病を克服する『行動』

因みにですが、私は「論理的」な人間です。「直観」よりも「論理的思考」を重視します。

しかし私には、『認知』から入る認知行動療法は、全く効きませんでした。おそらく、論理的に根拠を積み重ねて、「現実的に現状が絶望的である」と確信していたせいだと思います。

しかし、そんな私も『行動』から入ると、明らかな効果を実感できました。

私が行ったこと

まず行ったのは『運動』です。そのとき、うつ症状のレベルは「中程度」で、運動以外は引き籠っていた状態です。

運動により、「軽度」に差し掛かるかどうかのレベルで、障害者就労移行支援センターに通い始めます。そこには数種類の訓練が用意されているのですが、私は「楽そうだから」という理由で、パソコンのタイピング速度の向上に没頭していました。

車でサーキットを走るのが好きな私にとって、「タイムを削る作業」は性に合っていたようです。最終的には、1分間に200文字以上打てるようになりました。

また、一緒に訓練しているメンバーに、自分のホームページを自作している方がいました。私も以前、2ヵ月程度ですがWeb制作をかじった事があったので、「知ったかぶり」をしたい一心で、自宅で勉強を始めました。

以上のことを深く考えず、「とりあえず今日だけ」を積み重ねた結果、いつの間にか再就職できる状態にまで回復していました。

『行動』の効果

何故、上記のようなことが起きるのかというと、『行動』が「快感」をもたらしたからです。

『運動』をした後、「爽快感」が得られることは、誰しも経験があるでしょう。

タイピング速度の向上に努めれば、必然的に「昨日の記録を超えよう」と思います。それが成功すれば、「達成感」を得られます。

人よりもパソコンの知識が増えれば、嫌でも「自信」になってしまいます。

これらの「快感」が、『脳』に変化を生じさせます。

『扁桃体』の支配により、「不快」な感情に侵された『脳内』に、「快感」という要素が割って入るようなものです。それは支配のバランスが崩れて当たり前です。

『扁桃体』の役割を簡潔に言えば、「快・不快」の判断をすることです。そこに繰り返し「快」の信号が入り続ければ、「生命の危機は去った」と感じ、非常事態宣言を解除します。

それは当然『前頭前野』にも届き、「論理的な思考」が復活します。そして『扁桃体』の暴走を抑える機能を取り戻す、という好循環が生まれるのです。

自分の状況に合わせて応用する

環境や状況は、人それぞれです。

しかし、突き詰めて考えれば、二つの共通した「出来ることがあります

  • 今日、この時だけ集中する

明日のことは、明日考えれば良いです。

しかし、働いている方には、そこまでの自由度はありません。そこで、例えば昨日より少しだけ高い目標設定をし、成功すれば達成感が得られます。小さな成功体験でも、積もれば山となります。

  • 有酸素系の『運動』をする

うつ病の重症度によって、外に出るだけでも億劫な方もいるでしょう。

しんどいのは、よく承知しています。私も『重度』でしたから。

それでも行って欲しい理由が、『運動』にはあるのです。

何も考えずに『運動』するだけで、実に多くの効果が得られることを、以下の記事に纏めています。是非、読んでみてください。簡単に、脳を騙せます。

うつ病を治す脳の騙し方|まずは運動から入るべき5つの理由
うつ病であること自体、脳が騙されています。昔の名残でストレス=生命危機と勘違いしています。そのとき脳では血流と神経伝達物質の不足が生じます。運動をするとその不足を解消できます。しかも何も考える必要なしです。運動が脳を騙す仕組みを解説します。

最後に

認知行動療法を行うにあたって、『認知』が先か、『行動』から入るかは、ケースバイケースです。

ただ、うつ病自体が、すべてを悲観的に捉えてしまう病気です。『認知』の歪みを修正する、「現実的で悲観的ではない」アイデアが浮かばないなら、『行動』から入った方が簡単で楽だと思います。

「軽度」まで回復し、思考や頭の回転が改善されてから、『認知』の修正にもトライするのが良いでしょう。

そしてできれば、両方のスキルを体得して欲しいと思います。

なぜなら、ストレスをコントロールして再発を防ぐには、一つでも引き出しが多い方が有利だからです。